良い詩を見つけた

とても良い、好きな詩を見つけたので残しておく。Twitter経由で知った。

 

岡本かの子「女人ぼさつ」

薔薇見れば薔薇のゑまひ 
牡丹に逢はゞ牡丹の威
あやめの色のやさしきに優しく
女人われこそ観世音ぼさつ

柳絮直ければ即ち直く
松厳くしければわれも厳くし
杉いさぎよきに、はた、いさぎよく
女人われこそ観世音ぼさつ

そよ風にそよとし吹かれ
時に、はた、こゝろ浮雲
足裏の土踏むちから
女人われこそ観世音ぼさつ

人のかなしみ時には担ひ
よろこびを人に送りて
みづからをむなしくはする
女人われこそ観世音ぼさつ

ぼさつ、ぼさつ、観世音
千変万化
円融無碍もて世を救ふ
女人われこそ実に観世音

 

 

女という性を持った自分へのナルシシズムと覚悟が見える。

最近、ジェンダーの問題をなんとなく考えていることが多かった。大抵は人を憎む気持ちと愛する気持ちと、自分の中の偏りに嫌気がさす気持ちで出口がなくなり、考えるのをやめる。そんな中で読んだこの詩。自分の内側から湧きでた言葉で、自分の性を語るという強さに惹かれた。

大括りにしてしまって傷つき合いがちな問いを、大括りなまま、しかし自分の感覚と肌と言葉で綴っている。「足裏の土踏むちから 女人われこそ観世音ぼさつ」というところなんて正にそう。いいねえ。